新型コロナウイルスについて
最近、新型コロナウイルスと血管について話題になっております。
血管の専門医の立場から、新型コロナウィルスと血管について述べさせていただきます。
まず、新型コロナウィルスを語るにあたり、「免疫」について知ることが必須です。
■免疫
私たちの身体は、「免疫」というウイルスや細菌などの病原体から身体を守るシステムを持っていて、いつもは知らず知らずのうちに、この防衛部隊である免疫システムによって健康が守られています。
病原体から身体を守るために必要な免疫ですが、時に暴走し、健康な細胞を傷つけてしまうことがあります。免疫反応が暴走する一つの例が「サイトカインストーム」です。
■サイトカイン
サイトカインは、主に免疫細胞から分泌されるたんぱく質で、細胞同士の情報伝達の役割を担っています。様々な種類のサイトカインがあることが発見されていて、たとえば、インターフェロンやインターロイキンと呼ばれるものもあります。サイトカインは、身体に異常が起きていることを知らせてくれ、身体を守るために分泌されるため、防御反応を調整するのに需要な働きを担っています。病原体に感染すると、その細胞から炎症が起きたことを知らせ、炎症を抑えるようにサイトカインを使って情報を伝えます。
サイトカインが分泌されると、発熱や頭痛、倦怠感などが症状として現れる時があります。風邪やインフルエンザに罹った時を想像してみると、分かりやすいかもしれません。
■サイトカーンストームが起きると
病原体の感染量が多くなると、炎症量も多くなり、サイトカインも大量に放出されて、サイトカインストームが起きます。サイトカインストームが起きると、発熱や倦怠感などが過剰に起き、全身状態の悪化に繋がります。またそれ以外にも、血液を固める凝固系にも異常を起す場合があります。
新型コロナウイルスと血栓症の関係
■血栓症について
最近になって医学雑誌のLancetに武漢の新型コロナウイルス肺炎の入院患者の10%に心筋障害がみられたと発表され、新型コロナウイルスと血栓症の関係が話題になっています。新型コロナウイルス感染では、血栓を作るのに2つのパターンがあると言われています。
① 先にも述べましたが、サイトカインストームにより、血液の凝固系に異常が起こることで血栓が作られてしまいます。これにより、心筋梗塞、肺塞栓症、脳梗塞、下肢動脈塞栓を発症する可能性があります。
② 新型コロナウイルス自体が、肺を通じて血管内に入り込み、血管を直接攻撃して血栓を作る可能性も報告されています。血管の内皮細胞の表面にウイルスが接着することで、血管炎が起こり、血管が傷つくことで血栓ができてしまう可能性があります。
新型コロナウイルスで重症化する人の特徴は男性、喫煙している、高血圧や糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病を患っている、肥満、悪性腫瘍患者様、などが挙げられます。喫煙や肥満や生活習慣病は血管の機能が低下すると言われています。また、男性は女性より一般的に血管の機能が低下している、血管が傷ついていることが多いと言われております。つまり新型コロナウィルス肺炎の重症化は血管の問題がリスクになっているのです。
一度新型コロナウィルスが血管を攻撃すると、その炎症が次の攻撃を産み、連鎖で反応が生じ、あっという間に大量の血栓が生じて重症化していきます。したがって、無症状やごく軽症の人と重症化する人の二極化すると考えられます。
コロナウィルスに感染しても、無症状や軽症で済む方が多い一方で、900人の日本人の方がお亡くなりになっていることも事実です。お亡くなりになる方は、おそらく元々、血管に問題のある方が多いのではないかと考えます。
したがって、コロナウィルスに感染しても重症化しないために、血管を健康に若く保つことが重要です。