足のむくみ
むくみ外来一時中止のお知らせ
現在、むくみ外来受診希望の方が非常に多く、当クリニックでの対応可能件数を上回っている状態です。個々の患者様に時間をかけて丁寧に診察することが難しくなっており、また、すでに当院に通院されている方の受診にも支障をきたしています。
大変ご不便をおかけし、申し訳ございませんが、年内のむくみ外来の予約は停止させていただきます。予約再開の目処が立ちましたらHPにてお知らせさせていただきます。それまでは以下の文章を参考になさっていただければと存じます。
なお、急な片足(片側)のむくみにつきましては、生命に関わる『静脈血栓症』の可能性もございますので、クリニックに直接お電話いただければと存じます。
むくみのメカニズム
人間の体は、心臓から血液が全身の細胞へ動脈という道を使って酸素や栄養分を届けるために送り出され、届けると同時に細胞から排出された二酸化炭素や老廃物を回収して、静脈という道を使って心臓に血液を戻します。この流れの中で、足を流れ心臓に戻る血液は、重力に逆らって心臓に戻らなくてはなりません。そこで血液を戻すためのポンプの役割を果たすのがふくらはぎの筋肉なのです。人間の下半身には全体の7割もの血液が集まっていて、ふくらはぎの筋肉が動くことで血液を心臓に戻します。つまり血液を心臓に戻すには、ふくらはぎの筋肉を伸び縮みさせる必要があります。これがなんらかの理由でうまくいかなくなるとふくらはぎで血液が停滞して足がむくみます。
むくみの原因
むくみには、一過性のものと、慢性的なものがあります。
【一過性のもの】
病気が原因のむくみ以外は生活習慣に原因があるといっても過言ではないでしょう。就業環境の変化、昼夜逆転の仕事環境、日常生活での夜更かしなどで寝不足になってしまいます。不規則な食生活、ファーストフード、インスタント食品中心の食生活による栄養の偏りで、肥満傾向になるか過度なダイエットで痩せすぎになる危険性も。そこに運動不足が加わり、筋肉が衰え、肌もハリが無くなり、これがむくみ体質になる原因にもなります。しかも現代はストレスにさらされ、イライラが続く毎日を送っているでしょう。寝不足、運動不足、栄養の偏り、ストレスはむくみの大きな原因になります。
■長時間同じ姿勢でいる
立ち仕事やデスクワークなど、ずっと同じ姿勢の状態でいると、ふくらはぎの動きが少なくなり、筋肉の収縮作用によるポンプ機能がうまく働かなくなってしまいます。その結果、足の血液が心臓に戻りにくくなり、うっ滞してむくみに繋がります。(下の写真のように靴下の跡がいつまでも残ることがありませんか?)
■運動不足による筋力の低下
運動不足によってふくらはぎの筋肉が衰えると、ポンプ機能が低下し、足の血液を心臓へ送り戻す効率が悪くなります。
■過度なダイエット
過度なダイエットによって足の筋肉が弱ってしまう状態もこれと同様に、ポンプがうまく働かない結果となってしまうのです。
■塩分の摂りすぎ
味の濃い、塩分の高い食べ物を摂りすぎるとむくみの原因となります。塩分には水分を抱え込む性質があり、余分な水分をうまく排出できなくなり体の中に溜まってしまいます。
■ビタミン、ミネラル、たんぱく質の不足
特にカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルや、ビタミンB1、たんぱく質が不足すると、むくみが出やすくなります。
■アルコールの摂りすぎ
アルコールは血管内脱水の作用があるため、飲みすぎると体の水分が失われ、血液濃度が高くなります。体は危険を回避するために血管内に水分を取り込み、血液濃度を低くしようとします。この時に取り込んだ水分の一部がむくみとなります。
■体温調節不足
エアコンで温度変化のない環境の中で過ごしていると、体温を調節する発汗などの自律神経の働きが鈍くなり、水分代謝が低下し、むくみの原因になります。
■冷え
体の冷えは血行不良によるもので、足の毛細血管まで血液が循環しなくなります。そのため血液やリンパの流れが滞ってしまい、むくみにつながるのです。
■女性特有のむくみ
女性は男性よりも筋肉量が少ないため、足がむくみやすい傾向にあります。筋肉量が男性に比べ少ない女性は、心臓に向かって血液を押し戻す働きが弱いのです。また、妊娠や生理など、ホルモンの影響でむくみが出やすいと言えるでしょう。
妊娠によるむくみ:妊娠中は足のむくみを感じやすくなります。割合で言うと、約30%の女性が妊娠中にむくみを感じています。
生理によるむくみ:原因はホルモンです。黄体ホルモンというホルモンの分泌量が生理前になると多くなります。すると余分な水分が体に溜まりやすくなりむくみます。
【慢性的なもの】
一過性のむくみの原因に当てはまらず、数日間むくみが続くような場合には病気の可能性もありますので、できるだけ早めに病院を受診しましょう。
むくみに気付いた時
- むくみが一日中持続している
- むくみが何日も続いている
- 足の血管がボコボコ浮き出ている
- 足の痛みがともなっている
- 急に体重が増えた
- 顔やまぶたがむくむ
- 尿の出が悪い
- 坂道や階段で息が切れる、疲れやすい
などに注意し、これらの症状があれば一度浮腫の専門外来を受けたほうがいいでしょう。
■心臓の障害
心臓に何らかの障害があるために、心臓がポンプの役割を正常に果たせなくなり、血行が悪くなってむくみを引き起こすことがあります。いわゆる「心不全」といわれる状態です。
■肝臓や腎臓の障害
血中にはアルブミンというたんぱく質があり、血管に水分を取り込んだり排出したりしながら浸透圧を調整する役割を担っています。肝臓や腎臓に何らかの障害があると、このアルブミン量が低下し、血管での水分調整が効かなくなってしまい、むくみの原因となります。
■リンパ浮腫
血管と同様に全身に張り巡らされたリンパ管を流れるリンパ液が、なんらかの原因で流れが滞り四肢に溜まった状態をいいます。
原因としてはがんの術後に起こるものが多いです。大腸がん、子宮がん、乳がんなどの手術では、リンパ節を切除したり、放射線治療をして癌の転移を防ぐ必要がありますが、その際、リンパ節を損傷するため、手や足のリンパ液の流れが悪くなって、むくむわけです。また、がんの手術後すぐに発症する人もいれば、5年後、10年後に症状が突然現れることもあります。
がんの治療後ではなくともリンパ浮腫は起こるわけですが、原因が特定できないリンパ浮腫は特発性リンパ浮腫と言われています。
残念ながら、リンパ浮腫は自然に治ることがない病気です。急に悪化して急性リンパ管炎をおこすと熱を持ったり痛みを感じたりします。いずれにせよ、専門の血管外科医に管理してもらうのが望ましいです。
■下肢静脈瘤
足の静脈には一度心臓に向かった血液が逆流して足に戻ることを防ぐ静脈弁がついています。その静脈弁が壊れて、逆流した血液が足に溜まってしまう病気が原因となることがあります。詳しくは→リンク
■深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
長時間のバスや飛行機に乗ったり、病気で寝たきり状態など、同じ姿勢を取り続けた後に足の静脈に血栓ができることがあります。足の静脈に血栓ができると静脈が心臓に戻りにくくなり、足はむくみます。足に血栓ができるのを予防するには、水分摂取や足を動かすように努めるほか、弾性ストッキングを履くことも有効です。
参考図書:慶應義塾大学病院の医師100人と学ぶ病気の予習帳
※エコノミークラスの項を当クリニック院長が執筆しています。
足の静脈に血栓があった場合、これ以上血栓を大きくしないための治療に加えて、血栓を溶かす治療を行うこともあります。一般には、血栓があれば、肺血栓塞栓症(血栓が肺の血管に飛んでしまい、呼吸ができなくなり、命を落とすこともある。)のリスクを考えて入院し、速効性のあるヘパリンなどの抗凝固薬を毎日点滴しなくてはならなかったのですが、最近、飲み薬の抗凝固薬が登場し、血栓の浮遊や呼吸の苦しさといった症状がないなど、一定の条件を満たす場合、外来治療を行うことも可能になりました。
肺血栓塞栓症のリスク
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- 年齢60歳以上
- 心房細動
- 喫煙
- 手足のけが
- 心不全
- 悪性腫瘍
- 肥満
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 経口避妊薬
- 妊娠および分娩後
- 過去3カ月以内の手術 など
むくみ対策
むくみを解消し予防するには、むくみやすい生活を改善することが必要です。予防をすることで、もし、むくんでしまっても、その程度を和らげることができます。
■マッサージ・ストレッチ
ふくらはぎに溜まった余分な水分や血液を心臓に戻すようにしましょう。もむのではなく、なでるようにしてリンパ液の流れを改善します。また、ふくらはぎにある腓腹筋やヒラメ筋をストレッチでほぐすことで、血流の流れを良くし、血行を促進します。
■運動
ウォーキングや階段の上り下りなどで、筋肉を鍛え、ポンプ機能を働かせてあげましょう。また、足首をグルグル回してほぐしたり、仰向けで両足を上にあげてぶるぶると小刻みに動かすなどして血流を促進すると良いでしょう。眠る時に足の下に薄い座布団などを入れて、足を少し高くして眠るのも効果的です。
★自宅でできる簡単むくみケア
【かかと上げ下げ】 座った状態でかかとの上下運動をします。 |
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【足首まわし】 足首を右回り・左回りと大きく足先で円を描くように回します。 |
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【手脚ブルブル】 仰向けの状態で手脚を上にあげて揺らします。 |
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【ふくらはぎマッサージ】 足首から膝へ向けて少し力を入れて摩ります。 |
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【太ももマッサージ】 ふくらはぎマッサージの後に、太もも鼠蹊部へ向かって摩ります。 |
http://diet.news-postseven.com/3294
■食事
水分・塩分は適度に
むくみの主成分である水分、ナトリウムをためないためにも、食生活における水分、塩分の過剰摂取を避ける事が予防の大前提です。塩分の多い食事は水分の摂取にもつながるので、特に間食でのスナック類やカップラーメンなどは控えましょう。普段味の濃いものを食べる習慣があるのなら、なるべく薄味にしてください。
また、塩分の排出を促進するカリウムを積極的に摂取し、血流をよくする働きがあるビタミンEも適度に摂取すると良いでしょう。
◎カリウムを多く含む食品
アボカド・バナナ・はっさく・いよかん・もも・干し柿・りんご・キウイ・ひじき・昆布・ほうれん草・じゃがいも・にんにく・納豆など
◎ビタミンEを多く含む食品
アーモンド・ピーナッツ・アボカド・抹茶・かぼちゃ・ほうれん草・モロヘイヤ・赤ピーマン・バジル・卵・たらこ・いわし・しそ・ごまなど
■体を冷やさない工夫を
エアコンの冷風は、部屋の下部にとどまりますので、思った以上に足の冷えに繋がります。仕事でデスクワークが多い女性は冷風が直接足に当たらないように工夫しましょう。
■弾性ストッキングの使用
弾性ストッキングは、圧力のあるストッキングで足を圧迫してむくみを軽減します。適切に使用すれば非常に効果的です。
■十分な休息をとる
睡眠時など、横になると足に溜まった余分な水分が移動します。そして横になることで循環する血液量が増えます。すると腎臓への血液量も増え、余分な水分を尿として排出してくるのでむくみが軽減します。
★ むくみによる悪影響とは?
・しみ、たるみ
むくみによるしわ、たるみは、真皮の下にあるコラーゲンなどの弾力繊維を、むくみの影響で伸ばしてしまい、たるみやしわなどになってしまう場合があります。
★ 脚のむくみに関する監修
老舗の靴下メーカー 株式会社ナイガイのYouTubeチャンネルにて、「脚のむくみのメカニズム」に関する動画の監修を行いました。
また、WEBコンテンツも監修いたしましたのでぜひ合わせてご覧ください。リンクはこちら