心不全について
心不全とは?
人が生活していくためには、全身に十分な酸素と栄養が行き届かなければなりません。血液はその酸素と栄養を運ぶのが仕事です。その血液を送り出すポンプ役が心臓です。ポンプ機能が低下すると、心臓が全身に送り出す血液量が少なくなり、必要な血液循環量を確保できなくなるために症状が出現してきます。この症状、病態のことを「心不全」と言います。
現在欧米では最も多い疾患です。生活習慣の欧米化がすすむ日本でも近年増加傾向にあります。
原因は?
原因はさまざまあり、ほぼ全ての心臓の病気が最終的に心不全をきたします。
・心筋梗塞
・弁膜症(虚血性心疾患や動脈硬化による)
・心筋症
・高血圧
・不整脈(頻脈性、徐脈性)
・慢性腎臓病
・糖尿病
・睡眠時無呼吸症候群
気管支炎、肺炎などの感染症、塩分・水分の過剰な摂取、過度の運動、貧血などがきっかけとなって悪化します。
症状は?
・心不全になるとどうなる?
・肺などの臓器に水がたまり、息切れや呼吸困難を起こす
⇒ 階段や坂道で起こり、動悸も感じることもあります。
・心臓が大きくなる(心拡大、心肥大))
・食欲がなくなる
・体全体に水分が溜まって体重が増える
⇒ 初期症状として夜間の多尿、重症になると尿量は減少します。
・すねや足の甲あたりがむくむ
⇒ むくみは夕方になると強くなり、靴がきつくなることで気付くことがあります。
・全身症状として倦怠感、疲れやすさなどが現れる
・消化器症状として食欲不振や腹部膨満感が起こる
・動悸がする、足のむくみ、手足の冷感、意識レベルの低下、倦怠感、呼吸困難等の症状
診断は?
心不全は様々な疾患が原因で起こるので、その原因を調べることはとても重要です。その中でも重要な検査が心電図や心臓超音波検査です。
■全身観察:症状、身体所見、経過など。
■心電図:狭心症や心筋梗塞の所見の有無、不整脈がないかなどを判定できます。
■心臓超音波検査:超音波を用いて心臓の断面図を描写するもので、心臓の全体像が分かります。心臓の動きを診断する他に、サイズ、形態などが判定できます。
■胸部レントゲン写真:心臓と肺を撮影します。これにより心臓が拡大しているかどうか、肺のうっ血の有無、あるいは、息切れの原因となりうる肺の疾患にかかっているかどうか判定できます。
■血液検査:貧血があるか、肝臓、腎臓の機能障害があるか判定し、全身状態を調べます。またBNPというホルモンを測り、重症度判定の参考にします。
■ホルター心電図:通常24時間、心電図を装着して、日常生活での心臓のリズムを連続記録する検査方です。
■心臓核医学検査
■心臓カテーテル検査:足の付け根や手首の肘の動脈から細くて柔軟なチューブ(カテーテル)を心臓内にまで挿入し、心臓の各部屋の圧力や血流を測定する検査法です。
■冠動脈造影:心臓カテーテル法とともに行います。冠動脈に狭いところが無いか、血液が十分流れているかどうか判定します。
■MRI:最近ではMRIも用いられるようになりました。心筋の詳細な構造が分かります。
治療は?
◎安静
心臓を休ませるために安静が必要です。酸素が十分でない場合が多いので酸素吸入も行います。
◎薬物療法
内服や点滴、注射などです。全身にうっ滞した血液を尿として排出させる、むくみをとるための利尿薬や、弱った心臓の働きを助ける強心薬、心臓の負担を軽くする、循環を改善する血管拡張剤などです。心臓を保護する効果のある血圧降下剤も使用されます。
◎手術治療
冠動脈血行再建(バイパス手術など)
弁置換術(弁を人工弁に取り替える)
ペースメーカー治療
心臓再同期療法(CRT)(電気信号のズレを人工的刺激して足並みをそろえ、治療する)
植え込み型除細動器(不整脈を併発した場合に、この不整脈を停止させる)
◎呼吸、循環管理
重症のケースになると人工呼吸器による呼吸の管理や、心臓を保護する装置を体内に挿入に管理することもあります。
◎心臓移植
心臓の筋肉が拡張して収縮できなくなる特殊な疾患などでは、心臓移植を治療法とすることになります。